東大二次試験直前、娘と二人で海へ行った日|母娘で過ごした静かな一日

東大二次試験直前、娘と二人で海へ行った日|あの日が最後の穏やかな時間でした

東大二次試験まで、あと約1か月。

娘は高校の授業を選んで受けるようになり、それ以外の日は家で勉強していました。

一週間まるまる家にいることもありました。

そんなある日、私はふと思いました。

海へ行こう。

目次

娘と二人で海へ

ある日、

母

海に行こうか。

娘

いいね。

そう言って、二人で海へ出かけました。

娘と二人きりで海へ行くのは、久しぶりです。

昔は、いつも家族みんなでそろって海へでかけていました。

ですから、母娘ふたりきりだけで海へ行くということ自体が、新鮮でした。

娘が生まれたばかりの頃のことを思い出していました。

まだ小さかった娘。

毎日、母娘二人で過ごしていたあの頃。

あんなに小さかった娘は、東大二次試験を目前に控えた受験生になっていました。

ずいぶん大きくなったんだなぁと、しみじみ思いました。

昔から変わらない娘

娘は海へ行くと、必ず網を持って行きます。

高校三年生になっても、それは変わりませんでした。

その日も、ちゃんと網を持ってきていました。

そして、

カニを見つける。

海藻を拾う。

よく分からない生き物を捕まえる。

しゃがみ込んで何かしている後ろ姿は、小学生の頃と変わっていません。

捕まえた生き物は家へ持ち帰り、大事に育てていました。

家には今でも、娘が集めた貝殻がたくさん残されています。

好きなものは、小さい頃から何一つ変わっていませんでした。

潮の香りに包まれながら、ふたりでゆっくり歩きました。

海を歩きながら考えていたこと

海を歩きながら、私は娘の姿を何枚もカメラに収めました。

赤ちゃんだと思っていた娘は、いつの間にか自分で人生を決めるようになっていました。

共通テストの結果だけを見れば、志望校を変えるという選択もあったと思います。

それでも娘は、自分で決めた目標を最後まで貫きました。

東大へ行きなさいと言ったことは、一度もありません。

「こんなに険しい道をどうして自ら選ぶのだろう」

海を歩きながら、そんなことを何度も考えていました。

そのとき、ふと思い出した短歌があります。

親は子を育ててきたと言うけれど
勝手に赤い畑のトマト

― 俵万智『たんぽぽの日々』(小学館)

海を歩く娘の後ろ姿をずっと見つめていました。

受験直前の大切な時期に、どうして海へ行こうと思ったのか。

今でも、はっきりとした理由は分かりません。

ただ、

「今日、海へ行こう」

そんな気持ちになったのです。

平日の真昼間。

波の音だけが静かに聞こえる、穏やかな時間でした。

あの日の海は、今でも心に残っています

その後は、二次試験までまっしぐらでした。

毎日が慌ただしく過ぎ、試験本番を迎え、合格発表までの長い時間が続きました。

今振り返ると、あの日が、受験前に母娘でゆっくり過ごせた最後の時間だったように思います。

親は、勉強を代わってあげることはできません。

不安を消してあげることもできません。

母の私は、娘を心配しすぎて、一周回って、娘を海へ連れ出しました。

今でも、あの日「海へ行こう」と声をかけて、本当によかったと思っています。

東大二次試験直前、娘と二人で海へ行った日|あの日が最後の穏やかな時間でした

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