高3になって最初の東大模試。
E判定。
返ってきた判定を見て、私は思わず目を疑いました。
「え……?」
それまで娘は、東大模試でA判定を取ることもありました。
だから私は、「見間違えたのかな」と、もう一度見直しました。
でも、何度見てもE判定でした。
もちろん、模試の判定だけで合否が決まるわけではありません。
それは頭では分かっていました。
それでも、「E判定」という文字を見た瞬間、不安が一気に押し寄せてきました。
「もう東大は難しいの?」
そんなことばかり考えていました。
一番焦っていたのは、母の私でした
今振り返ると、焦っていたのは娘ではなく、母の私だけでした。
母どこか塾へ通った方がいいのかな?今からでも間に合うのかな?
近所の塾を調べながら、今までのんきに過ごしていた自分を後悔しました。
何とかしなければ。
娘は、いつも通りでした
でも、娘は違いました。
判定を見て悔しそうにはしていましたが、必要以上に落ち込むことはありませんでした。
娘ママ、なんにも言わないでね。わかっているから
私は、その一言で何も言えなくなりました。
娘は、それ以上この話をすることもなく、静かに机へ向かいました。
娘が通っていたのは地方の公立高校です。
毎日の授業に加え、学校から出される宿題がたくさんありました。
学校の課題を終わらせ、自分の勉強をすると、それだけで一日が終わってしまいます。
私はひとりで反省会をしていました。
母塾に入れさせてあげなかったのがいけなかったのかな
母親として何かできることがあったんじゃないかな
母とりあえず塾を探してみよう
そんなことばかり考えていました。
でも、娘の生活を見ていると、それが現実的ではないことはすぐに分かりました。
朝早く起きて学校へ行き、遅くに帰宅する。
お風呂に入ると、疲れてすぐ眠ってしまう。
そんな毎日でした。
「塾へ行こう」
そう言える時間なんて、どこにもありませんでした。
「塾に行かなかった」というより、「塾に行けなかった」という方が正しかったと思います。
それ以上に勉強しろなどとは可哀想で言えなかったのです。
当時の私は、知らないことがありました
当時の私は、
母高3になると浪人生が模試に加わるから判定が下がるんだ
そんなふうに納得していました。
でも、あとになって分かったことがあります。
地方の公立高校では、高3になっても通常授業が続き、共通テスト対策や東大対策が本格化するのは夏以降という学校も少なくありません。
一方、中高一貫校では、高2までに高校課程を終え、高3は受験演習中心になる学校もあります。
つまり、高3春は、現役生同士であっても、受験勉強の進み具合に大きな差がある時期だったのです。
高3春の現役生は、まだ実力を完成させている途中なのです。
私は、そのことを知りませんでした。
それでも模試を受ける意味
ここで、こんな疑問を持つ方がいらっしゃるかもしれません。
「それなら、春の東大模試を受ける意味はあるの?」
今なら、その答えが分かります。
東大模試は、合格を予想するためだけに受けるものではありません。
本番までに成長するために受けるものです。
自分の弱点を知ること。
そして何より、東大二次試験特有の記述問題や時間配分に慣れることです。
東大の問題は、長い問題文を読み、考え、記述し、限られた時間で解き切る力が求められます。
特に時間配分を気にしながら問題を解く必要があります。
その感覚は、実際に東大型の模試を受けなければ身に付けられないことです。
娘は、判定を気にするより先に復習をしていました。
模試は、その課題を教えてくれる大切な機会だったのです。
あの頃の私に伝えたいこと
高3最初の東大模試でE判定を見たあの日。
私は、判定を見て一喜一憂し過ぎていました。
そして、ひとり、あたふたしていました。
娘はもう、次にやるべきことが分かっていました。
東大受験は、「春に一番できる人」が合格する試験ではありません。
東大二次試験の日に、一番力を発揮できた人が合格する試験です。
あの日のE判定は、東大を諦める理由にはなりませんでした。
娘は、E判定ではなく、その先の東大二次試験を見ていました。
だから最後まで走り切ることができたのだと思います。
あの日、
娘ママ、なんにも言わないでね。わかっているから
あの一言の意味を、本当に理解できたのは、ずっと後になってからでした。
春の模試は、未来を決めるものではありません。
本番まで、まだ成長できる時間は十分に残っています。
あの日の私と同じように、不安でいっぱいになっているお母さんがいたら、このことだけは伝えたいです。
春の判定だけで、未来は決まりません。
東大二次試験まで、まだ成長できる時間は残されています。
高3春のE判定は、ゴールではなく、スタート地点に過ぎません。
焦っていたのは、私だけだったのです。



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